空間製作社第25回公演「君のメロディ」5/23開幕

 空間製作社第25回公演「君のメロディ」が、2024年5月23日(木)~26日(日)に川崎市アートセンター アルテリオ小劇場で上演されます。

最新情報は空間製作社公式X(旧Twitter)をご覧下さい。

 「空間製作社」というどこか不思議な名前のこちらの劇団は、演劇だけに拘らず、映像やライブなど様々な「空間」を表現する団体として名付けられ、2005年から活動を続けています。

 同カンパニーと言えば、実在したテレジン収容所をモデルとした、第二次世界大戦の頃のナチスドイツのユダヤ人強制収容所を舞台に、収容所に連れていかれたゲルダが、親と別れた子供達・芸術家達と共に知恵を絞り、ナチスに立ち向かう壮大な作品「GHETTO」が代表作ですが、今回の「君のメロディ」はガラリと変わり、ミュージカル女優とその旦那さんが主人公となっている作品です。

 物語を引っ張っていく中心キャストは大人達ですが、脇を固めるキャストとして、渡邉早苗役を演じる上杉璃乃さん・高原碧那さんを始めとして、ジュニアミュージカルで活躍している子供達も多数起用されています。

ミュージカル「ミルコとカギロイの森」エル・グレイ役などで活躍してきた高原碧那さん(写真左から2人目)も、もう高校1年生。
劇団「AngelLandmark」の公演を中心に活躍する上杉璃乃さん(写真左から3人目)。空間製作社さんの作品は3度目の出演となる高校2年生。

 そういった事もあり、この作品についてご存知も方も多いかと思いますが、現在ほとんど明かされていない今作のストーリーが気になるところ。そこで今回、当サイトではカンパニー代表で、今作品の演出・振付担当の加藤毅さんに突撃!カンパニー設立から、今作のストーリーまで多岐に渡りお伺いしてきました。

 一昨年12月の「GHETTO」以来1年5ヶ月にお会いした加藤さん。いつもと変わらない笑顔で話し始めてくれました。


ーーまず、「空間製作社」が設立された経緯について教えて下さい。

 元々僕は演出ではなくて役者からスタートしたんです。劇団に入った後、1回プロダクションにも入っているんですよ。(プロダクションにも)役者として入ったんですけど、振付などをちょっとずつ任される様になり、ミュージカル部門の責任者をやらせて頂く事になったんです。その時に音楽座の同期に「舞台を自分で作らなきゃいけないんだ。出てくれない?」と声をかけて(公演を)一本打ってみたんですね。そこでなかなかの感触を得てしまって、「自分でちょっとやってみたいな。」と思ったんです。試しにやろうという事で、上田という映画監督をやっている知り合いに、「一緒に演出をやってくれないかな?これ(団体として最初の公演)でお互いが良ければ、ずっと一緒にやってみない?」という事で一本やってみたのが発端です。
 正式に2005年に立ち上げて以来、入れ替わりはあるものの、基本ずっと同じメンバーでやっていますね。その頃は全てのことを自分達だけでやらなければいけなかったので、落ち度もすごく多いなかで、色んな人に手助けして頂けて、「やっと最近まともな団体になれてきたかな~」という感じで・・・まだまだの団体です(笑)。

ーーこの不思議なカンパニー名はどういった由来なのでしょうか?

 ミュージカルを主体に活動をしているメンバーがほとんどなんですけれども、それぞれ(他に)イベントステージやライブ活動など色々な事もやっている人が多かったんですね。団体としてもミュージカルにこだわらずに、ライブや映画、ワークショプなどお客様も含めて、大人数で一つの空間を共有する・作るという意味で、「空間を製作する団体」として、この団体名となりました。
 (団員としての)メンバーは7人居るんですけど、「劇団」としてではなく「団体」としてやっていまして、参加したいと思う時に参加するという形なんです。だから、「今回は裏方で参加します。」という団員も居れば、「こっちの舞台に出たいから、今回何も手伝えないや。」という団員も居ますし、その時々にやりたいメンバーでやっているという感じです。

30分近いインタビューにも関わらず、こちらからの質問に身振り手振りを交えて、最後まで丁寧に答えて下さいました。

ーーそれでは、今回の作品「君のメロディ」についてお聞きしたいと思います。まずはあらすじを教えて下さい。

 実話が元になっています。平凡な女性とその旦那さんの生涯を辿っている話なんですけれども、どんな人にもあり得る事を綴ったお話です。その人に関わる他者からの視線も交えて、ファンタジー要素も入れながらドラマティックに仕上げています。

 (もう少し具体的にお話すると)1幕は一人のミュージカル女優の生涯を描いたお話です。途中、女優を続けていることのできない(大きな)出来事があり、2幕へ続きます。2幕では旦那様の方の人生を描いていて、本人がどの様に変わり、どの様に生きていくのかを描いています。

ーー毎回の様に子役キャストの起用がありますが、加藤さん自身は以前から子供達との接点が多かったりするのでしょうか?

 さっきお話したプロダクションに関わりの深い、地域の子どもミュージカル団体を振付指導する機会がありまして、そこから子どもに対する指導が始まりましたね。もうかれこれ30年くらいですか・・・。ちなみに主婦の団体もありまして、同じ様に40代から70代の方も指導する様になったんですよ。


これまで幅広い世代の指導に携わってきた加藤さん。稽古場の合間には、子供達と楽しく笑顔で雑談している光景も見られ、子役との距離を感じさせない口調での指導が印象的でした。

「空間製作社」では演劇作品の創作に限らず、役者達へのサポートも積極的に行っています。何年にも渡り加藤さんの指導を受けてきていて、今回子役キャストとして出演する渡部りおさん・桝谷柚乃さんを交えながら、子供達に対しての指導という面からもお聞きしました。


ーー指導はどういった雰囲気なのでしょうか?印象に残っている事はありますか?

(渡部)加藤先生の言っている事が分からない時に、例え方が面白いです。

(桝谷)小さい時に違う舞台の時に、自分が気を抜いていて、怒鳴っている感じはないけど、真剣な顔で怒られた事が印象に残っています。

稽古の合間を縫って笑顔でインタビューに答えてくれた渡部りおさん(左)・桝谷柚乃さん(右)。

ーー初めて会った時はどんな方だと感じましたか?

(渡部)4年生の時に(空間製作社作品の)オーディションを受けた時です、そこで加藤先生がニコニコしながら見ていたので、「優しい人なのかな?」って思いました。

(桝谷)1年生の時、地域のミュージカル団体に、お母さんの友達に誘われて入った時に初めて会ったんですけど、ミュージカルとかよく分からなかったから、(その時は)普通の人だと思いました(笑)。

 柚乃は・・・私が空間製作社とは全く関係のないところで、ミュージカル教室の団体を持っていたので、そこに入ってきた時です。そこが閉鎖してしまったので、「こっちに来て続けてみる?」という話をして「続けます。」という事でこちらに来たんですよ。

 りおは・・・うちのジュニアメンバー内に数人大親友がいて、彼女達が空間の舞台に出ているのを観て、「私もやりたい、挑戦したい」と言って飛び込んできた感じです。

ーー「空間製作社」にはお二人を含めて6人子役がいらっしゃいますが、子役の募集は経常的にされているのでしょうか?

 (特にジュニアの募集という事はしていませんが)もちろんやってみたいという声があれば、「じゃあちょっと(ダンスや歌・演技を)見せてみて。(その後)一緒にやってみようか。」と進んでいく可能性はありますよね。ただ、併設の事務所ではなく、ジュニアの子達は、あくまでもうちが主催している「レッスンに参加している子」なので、本公演があっても必ずオーディションを受けさせています。なので、もちろん出れない可能性もあるんですよ。

 「こういう舞台をうけていいですか?」と言われても「どうぞどうぞ」という感じです。もちろんうちが関わらずにフリーとしてやって頂いてもいいですし、もし大手の事務所さんとかで、やりくりがお母様ではどうにもならなくて大変そうであれば、「うちのメンバーが付き添って一緒にやりましょうか?」っていうパターンもありますし、空間製作社とお付き合いのある事務所さんから「こういう子探しています。オーディションあります。」と言われた時に振ったりする事もありますけど、みんなの為に(案件を)探してってとこまではやっていないです。

 人との繋がりで成り立っている団体ですので、空間製作社にジュニアとして参加するかどうかはご縁だと思っています。ですので、特別所属契約等は行なっておりません。ご興味があれば気軽に見学、体験に来て頂けると嬉しいです。所属ではなく、単発でレッスンに来てくれる方もいらっしゃいますので。


加藤さんの飾らない笑顔と人柄が容易に伝わってくる初めて会った時のエピソード。そして、舞台に立つ真剣さが、二人の短い言葉のなかでもしっかりと伝わってきました。渡部さんの言っていた「例え方が面白い」という意味が、この後の稽古中随所に見られます。

親しみやすい気さくな笑顔に、思わず質問も増えてしまいました。子ども達も委縮する事無く稽古がやりやすそうです。

ーー加藤さんは二人をどの様に評価されているのでしょうか?

 柚乃は・・・頑固者なんです笑。だからこそ出来る、自分が納得するまで役を突き詰めて行くという姿勢が良いです。分からなければ聞く、動く、調べると忙しそうにやってます。

 りおは・・・見た目とは反して負けず嫌いで、特に出来ない自分に悔しい様です。内面を開き出しきれない殻はまだありますが、着実に実力をつけていっている様に見えます。

ーーご自身が子ども達への指導を行うなかで、最も意識している点を教えて下さい。

 子どもに限らず、その場の素の感情を重視しています。本人が今どの様に感じているのか・・・例えばメンタルがいつもより少し弱っている・悩んでいるという事であれば、マイナスにならない様な言い方・ダメ出しをします。逆にすごくテンションがあがっていて有頂天になる様だったら、そうならない様なダメ出しをしますし、逆に良い方向に行くと考えれば有頂天にさせてあげるダメ出しをする。子どもは自分のメンタルを抑えづらくて(表に)出てしまうので、そこを大事にしています。

 外部の子には「これ覚えてこないと稽古にならないよね?時間が勿体無いよね?次回はもっと充実した時間にしよう!」という感じなんですけど、空間の子に関しては「覚えていなんだったら、(稽古場に)入らなくていい。」っていう感じですね。

 (外部の子は)彼女達の性格や現状、今後のやりたい事・目指している事をこちらが熟知している訳ではないので、慎重に接しています。まずは信頼関係を築く所から。その後、うちの子達と同じ様に指導出来る様に目指しています。

 この子達(渡部さん・桝谷さん)は「舞台に立つ」という、役者としての責任も含めてしっかりと。自分がやるべき事を怠っている事で、その事自体ではなく周りにどういう影響が出るかを教える様にしています。ガッツリ叱る事で、今まで本人が気付けなかった感情が芝居に出て来たりする事も少なくないです。

ーー人によっては子役に「これをこうやって下さい。」という指導をする方もいますが。

 そうすると演技が「演出の作ったもの」になってしまうと思うんです。「言われて作られたもの」が滲み出て来てしまうので。台本を読んで「この人はこういう風に思ったんじゃないかな?」「私も共感出来る。」という気持ちを大切にしないと本物の演技は出てこないと考えていますので、基本放任主義です。


上記の様に子ども達に対する想いを語ってくれた加藤さん、「子役」としてではなく一人の「役者」として敬意を持ちながら接している事が、インタビューを通してひしひしと伝わってきました。


ーーこの作品で加藤さんが伝えたいメッセージとは何でしょうか?

 生きる意味、生きがいを感じている人は幸せである。無いと感じる人は不幸せ?感じられない人は生きる意味がないわけではなく、ただ気づかないだけ。それは全ての人に平等にある事で、それを感じる瞬間は日常の何気ない所にある。必ず人には生きる意味と義務は必ずある。(この作品を観て)そう感じてもらいたいです。

ーー最後に公演に向けての見どころと意気込みをお一人ずつお願いします。

(加藤)空間製作社としては、珍しくかなり派手に情熱的・感情的に歌うシーンもあり、ミュージカル要素の強い作品です。うちの特徴であるどんでん返しというか、ちょっしたトリックや種も仕込まれていて、盛り沢山なミュージカルになっていますので、そこをお楽しみ下さい。

(渡部)今回の役は明るくて元気な役なので、観ている人も明るくなれる様に頑張ります。

(桝谷)今回のミュージカルは新作でもあるし、私も初めて(この作品に)出演するので、精一杯頑張りたいと思います。

二人は共にAチーム。序盤に二人で歌う温かいミュージカルナンバーは必見です。

 インタビューを終えるとそのまま稽古場に残り、2時間ほど稽古を見学しました。この日は歌唱指導の様でしたが、この時間にはそれぞれのミュージカルナンバーを振りも交えて行い、指導が行われるという流れで進行していきました。


大人キャストへの指導は、以下の様に実に細かく行われていました。短時間でしたが、印象に残った指導をいくつか挙げると・・・

 一人一人の人生観がもっと見たいかな?どんな人かとか・・・そんなところまでは分からないかもしれないけど、歌詞をネガティブに感じてるのかポジティブに感じているのか?ネガティブになりそうなものをポジティブにとらえようと頑張って進んでいるのか?歩みは遅いけれども確実に進んでいるのか?その辺は感受性によって変わってくると思うし、感じ方というものも歌詞の噛み砕き方と、それを(実際に)言葉として出すという事を考えると、動きとか表情が見えてくると思います。一人一人が歌詞のなかのものを自分の今いる役でどう考えて言葉に出てきているのかを考えてもらえると、見えてくるかな?

 「AHー」という歌詞をもうちょっと言葉に置き換えておいた方が良いかな?流れる様に歌ってしまっているので、感情も流れてしまう。
 英語でいうところの「OH」の感覚で取った方が良いかな?「OH」ってビックリだったり喜んでいたり悲しんでいたりとか、何でも「OH」って使おうと思うんだよね。瞬発的な感情だから、それに近い感じで「AHー」も「OHHHH」みたいな感覚で前に飛ばす感じにしてほしい。

インタビューで語っていた「素の感情」を大切にした指導が垣間見えた瞬間も。

 色々と決まり事を守らなきゃという頭が少しある様に見えるんだよね。もっとこの場所を楽しんでいて良いと思う。この場所を。周りの人に「私がここで歌っているわ。」というくらいの感覚で。

また、渡部さんが語っていた「例え方が面白い」の一例を、稽古中に拝見する事が出来ました。

 「霧が晴れた後の世界っていまどんなイメージの景色が見えてる?」との質問に「綺麗な山のてっぺん」と答える子役キャスト。「だからか!」という一言と共に、ディズニーランドに例えて、「ディズニーランドのアーケード街があるじゃん。アーケードのところはお買い物のエリアだからそうでもないけど、入って行って開けた時にパレードから色々あって「ぶわぁ~」と広がって行くとこ一杯あるじゃん。そういうテンションと景色でやってみて。山の方の景色は綺麗な景色を見ているんだけど、自分が溶け込んで消えてしまっている様に見えるんだ。

加藤さんご自身も「全く関係無い事に例える」とインタビューでおっしゃっていた通りでしたが、こういった分かりやすい指導を見ていると、子ども達にとって有益な時間だと思いますし、ダメ出しで加藤さんの言葉を聞く際の自然な態度と返答・表情を見ていると、「こうやってみたけど違ったのか。」と演じる事の楽しさを存分に味わいながら稽古しているのが感じられ、リピートして出演する子が多い事実にも頷けました。


 今回の稽古場訪問では、子ども達の指導にスポットを当てた内容でしたが、作品は大人キャストが物語の中心となっています。ストーリーはもちろんですが、加藤さんが振付も担当した激しいダンスが披露されます。一曲終わると呼吸も激しくなり思わず心配するほどでしたが、喜怒哀楽全てが詰まった大人キャスト達のダンスでの表現もまた見どころかもしれません。果たしてどういった作品なのでしょうか?「君のメロディ」の本番が今から楽しみです。

大人キャスト達の激しいダンスで、劇場中が大いに盛り上がる事間違いなしです!

公演情報

【公演名】
空間製作社第25回公演 ミュージカル「君のメロディ」


【公演日時】
5月23日(木)18時(A班)
5月24日(金)18時(B班)
5月25日(土)13時(B班)/18時(A班)
5月26日(日)11時30分(A班) /16時(B班)

【会場】
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場

【劇場チケット】
前売 6,000円
チケット予約フォーム

あらすじ

私とパーティーを組んでみませんか?
私、歌を歌うことくらいしかてきないけど?

彼女は歌が歌えれば幸せな人だった。歌と共に生きる人生。そんな彼女のそばにいられることが私の幸せだった。 共に歳を重ねて穏やかな最後を、そんな約束をした。だが、病が彼女から歌を奪った。そんな彼女が最後に願ったこと、 それは「もう一度歌いたい⋯⋯」 彼女が人生のすべてだった私と、そして、彼女の仲間たちの、人生という冒険の旅の物語。 見つけるんだ。結末に流れる、そうだ、君のメロディを。

スタッフ

原作モデル:堤末歩
脚本:四方田直樹(SkyTheaterPROJECT)
演出・振付:加藤毅
作曲:まつもとみほ
作曲・編曲:花岡宏晃
舞台監督:今泉馨(P.P.P)、児玉恒士((P.P.P)
照明:葛生英之(Kiesselbach)
音響:塚原康裕(LLCアコルト)
音響操作:釜田純子
美術:河井妙子
歌唱指導:市川ゆり
振付:菊池恵衣(劇DANs)
演出助手:伊藤翔悟、阿久津城
衣装:阿久津城
小道具:小松豊(集団快遊魚)
チラシデザイン:河原絢子
写真:永友ヒロミ
制作:伊藤翔悟
撮影:うえだかつひこ
企画・製作:空間製作社

情報は記事作成時のものです。必ず公式サイトにて最新情報をご確認下さい。

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